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梶谷隆幸「ま、やる気ない系なんで」ヤジにもブレない“三振王”の本心。

ツボにハマった時の長打力、そして走力はチームでも有数。2番打者でも下位打線でも、梶谷の存在は相手にとっては厄介だ。

一生懸命やらない人に対して、世間は手厳しい。本人は一生懸命でも、そう見えないというだけで批判の対象になる。
スポーツの世界ではなおさらそうだ。
期待に満ちた無数の視線が注がれるプロの世界では、なおさらそうだ。
ベイスターズの背番号3、梶谷隆幸にとっては生きづらい世界だろうと思う。プロ野球選手になって11年目の28歳は、ユニフォームを着ても脱いでも、どこか"ゆるい"雰囲気を漂わせる。他人が抱くイメージ、印象という面で相当の苦労を重ねてきたことだろう。
ある時、こんなことを言っていた。
「ヤジ、昔はいっぱいありましたね。若いころはきつかったですけどね。でも、いまは何とも思わないです。そういうふうに見えがちな人って絶対いると思うし、ぼくがそれだったというだけで。性格は変えられない。別に、それで嫌いなら嫌いでいい……」
そして梶谷は「ま、やる気ない系なんで」と苦笑した。

「そりゃ減らしたいですけど、正直その技術はない」

言うまでもないことだが、あくまで「系」であって、本当にやる気がないわけではない。それは、左手薬指を骨折しながら出場を懇願し、ホームランまで打ってみせた昨シーズンのCSでの姿を思い返せば明白だ。
心ないヤジを浴びやすいのは、三振の多さのせいでもある。今シーズンはすでに89三振で両リーグ最多(7月10日終了時点)。セ・リーグで2番目に多いスワローズの山田哲人を17個差で突き放す独走状態だ。
梶谷は言う。
「そりゃ減らしたいですけど、正直、ぼくにはその技術がないと思ってる。いままでいろんなことをやりましたけど、根本的に、そんな器用な人間じゃないんだろうなって。だからいまは割り切ってますね。どうせアウトはアウトだからって」

「浅いカウントで当てに行くのがぼくは大っ嫌い」

周囲に助言を求め、カットで粘る練習に挑んだ。三振しにくいバットの軌道を探り、追い込まれてからの思考法はどうあるべきかを模索した。試行錯誤はかれこれ「4年ぐらいやっている」。しかし、これという答えにたどりつくことはできずにいる。わかったのは、自分が歩むべき道はそこにないこと、三振は自分らしいバッティングをするためにはやむをえないということだった。
三振0で安打も0では意味がない。三振10でも安打が10あればいい。単純に言えば、そういうことだ。
「もともと早打ちではありますけど、浅いカウントで当てに行くのがぼくは大っ嫌いなんです。極端な話、0-0(ノーボールノーストライク)から当てに行ってセカンドゴロになるぐらいなら、三振のほうがいい。(当てに行かなければ)打つチャンスが残るわけだし、思いきって振れば長打につながる可能性もある。三振の数を減らしたら率も上がってくるかといったら……そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。そこは難しいですよね」
あっけない空振り。気のないスイング。傍目にはそんなふうに見えたとしても、それは梶谷が迂回に迂回を重ねてたどりついた打撃のスタイルだ。それが梶谷隆幸という人間なのだと言ってもいい。

それでも12本塁打はキャリア最多ペースである。

投手が投げるボールに「合わせる」ことをせず、3つのストライクのうち1球でいいから自分のスイングで捉えることに重きを置くスタンス。キャリア最多ペースで刻む本塁打(12本)が甘い果実だとすれば、狙いが外れてあえなく三振した時の悪印象は、茂みに突き刺した腕が負わねばならない傷なのだ。
何かを得るために何かを犠牲にする。その割り切りの潔さは梶谷の特質だ。
三振との向き合い方がそうであるように、考え抜くというプロセスを経るからこそ、割り切れる。

目標はトリプルスリーではなく「25本塁打40盗塁」。

トリプルスリーを狙えるポテンシャルを秘めているとしばしば評されながら、今シーズンの目標には「25本塁打・40盗塁」を掲げる。
あるチーム関係者が教えてくれた。
「打率って(打者の主要な指標の中で)唯一、減るものじゃないですか。カジは減るものを追いかけたくないそうです。増えるもの、積み上げるものを追いかけていたいから、目標の中に打率がないんだと。そんなことを言ってました」
梶谷の過去の打率は、2013年に一度だけ3割を超えたものの、それ以降は2割6分から2割7分台にとどまっている。長いシーズン、率を落とさぬようにと意識して当てに行く打撃をするよりも、間違いなく増えていくものを積み重ねたほうが自分らしくいられる――ここにも、プロ入り以来の思索と、その答えとして何かを大胆に切り捨てる決断の痕跡が見える。
周囲はトリプルスリーと言うけれど、自分のパフォーマンスを最大限に引き出すラインは「25本塁打・40盗塁」。
他者からの視線に迎合せず、我が道を行く。
何とも梶谷らしい目標設定だ。

提供元:Number Web

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